竜田一人『いちえふ 〜福島第一原子力発電所労働記〜』
竜田一人『いちえふ 〜福島第一原子力発電所労働記〜』
全3巻(2014〜2015)
題名や表紙から、告発に近いものか、もっと言えば暴露するような内容かとこちらもつい身構えた。が、それらは全く当たらないどころか、むしろそういった誤解や偏見を解きほぐすべく努力していることが窺い知れた。
まさに僕自身にも先入観があったと気づかされた。
見て体験したそのままを細かく描くルポ漫画で、作者は作業員の休憩所を管理する役目や、作業ロボットを運び介助する仕事を担う。
どのように放射線対策をしているか、廃炉作業の当時の進捗状況、多重下請け構造の実態、一日の労働はどういった流れか。
事故後の原発という特殊な現場でなければ、淡々とした「仕事漫画」のようにも読める。
その場で働いた人にしか分からないゆえに貴重な記録だと思うし、もちろん初めて知ることばかり。
時間が経つにつれ情報量も減ってくる中で、広く伝える手段としても有効だと感じた。
ときおり、やや楽観的にすぎるのでは…と思わなくもなかったが、あまり深刻にしては手に取る人も限られるだろうし、元来明るい性格の人なのだろう。
誰かがやらねばならないことだし、あっけらかんとせねば続けられないのかな…とも想像した。
半分ほどは作者自身のことも描かれ、この原稿自体を出版社に持ち込むところも読めたりする。
率直に言って、絵や展開など話の見せ方はまだまだ発展の余地がありそうなので、次の作品にも期待したい。
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