映画『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』
『アイヒマン・ショー 歴史を映した男たち』
“The Eichmann Show”
(2015年、イギリス、96分)
1961年、ホロコーストを推進した戦犯としてアドルフ・アイヒマンの裁判がイスラエルで行われた。
その模様を全世界に発信すべく、テレビ放映しようと画策した人たちがいた。彼らにどのような苦闘や葛藤があったか。敢えて舞台裏の人たちを主題に絞ることで、「真実」をどう知らせるか、どう撮れば人々に伝えることができるのか、こちらも共に考えさせられる力作。
やり遂げる意志を持ち機転が利くプロデューサーと、不遇を乗り越えながら執念に近い義務感を持つ監督。特にこの主役二人が迫力ある演技で、簡潔な台詞回しとテンポ良い編集でリズムを作っていく。
まさにこのときの記録映像もふんだんに使われ、新たなドラマ部分と組み合わさることで大きな説得力を獲得している。映画内でも言及される「映像の力」を、まさしく見せつけられることになる。
生存者たちが次々と証言する中、話を聞いてもらえず、諦め、声を失っていた人たちが放送に希望を見出していく過程も力強い。
誰しもが加害者になり得る。何か特殊な人間による例外的な悪ではなく、私たちと同じ人間がただ状況に対応しただけだったのだ。そう証明したかった監督の狙いは、最後まで抑圧した無表情を貫き通した被告人に対して、果たして成功したのだろうか?
何が起こっていたのか。なぜそうなってしまったのか。
このあまりにも大きな問いは、今もこれからも有効であり続けるだろう。
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